半芸術展
本展覧会は、半芸術をキーワードに世代もタイプも異なる様々な作家を集めたグループ展となります。"反"芸術ではなく"半"芸術。一見して中途半端にも思えるタイトルの展覧会を、なぜ「芸術原理主義」を掲げる美学校が企画し開催するのでしょうか。それは半芸術という言葉を切り口に、現在のアートや芸術のよりリアルなあり方(リアルを原理主義と置き換えてもいいかもしれません)を探ることができるのではないかと考えたからです。では、そのリアルなあり方とは一体なんでしょうか?既存の芸術から半分出ている、あるいは半分入っていることで見えてくる芸術の新たな地平とともに、本展覧会を通して考えていければと思います。
日程:2015年4月27日(月)〜5月2日(土)
時間:10:00〜18:30(最終日は17:00まで)
出展:オオケムシ、小田島等、小林亮平、佐藤直樹、高野紗織(小指)、長尾謙一郎、中島あかね、ぬQ、マジック・コバヤシ、水野健一郎、渡部剛、mizutama、20m61
会場:文房堂ギャラリー(東京都千代田区神田神保町1-21-1文房堂ビル4F)地図はこちら
入場料:無料
協力:文房堂ギャラリー
【イベント情報】
・オープニングパーティー
2015年4月27日(月)17:00〜18:30
【サテライト展】
「半芸術店」
日程:2015年4月27日(月)〜5月23日(土)[日曜・祝日休み]
時間 :11:00〜15:00、18:30〜23:00
会場:中華料理 ひかり(東京都千代田区神田司町2-16 鉄鋼新聞第5ビル1F)
出展:オオケムシ、小田島等、小林亮平、佐藤直樹、高野紗織(小指)、長尾謙一郎、中島あかね、ぬQ、マジック・コバヤシ、水野健一郎、渡部剛、mizutama、20m61
※本展示は、営業中の飲食店での開催となりますので、ご来場の際は必ずご注文ください。また、ご鑑賞の際は、他のお客様に迷惑とならないようご配慮をお願いいたします。なお、開催期間や時間等が予告なしに変更となる可能性がありますので、事前にご了承ください。
半芸術展
多くの情報や価値観はほぼ記号的にマスメディアによって供給され、個々の思考の大部分が無化された世紀末。情報を受けとる側の多くは白痴化していた。その時期に急成長して来たインターネットが、ある者を覚醒させ、またある者の白痴化を更に強化した。
まさにそれ、いや、これ、が、「今」である。
なにが幸せ?なにが楽しい?なにが成功?なにが良い?なにが正しい?
そんな根源の問いすらもマスメディア経由の得体の知れない力で漠然としたイメージに変換されコントロールされている。
そんな「今」、「半芸術」だ。
この言葉自体は後聞きであるが15年以上前に使っていた人がいたようだ。しかしそれを知ってか知らずか本展発案者の1人である小田島等のインスピレーションやニュアンスを想像しながら、今このテキストに向きあっている。また、本展参加作家が自分を含め、この「展示名」をどこまで把握、いかに理解し、または誤解しているのかはわからない。
反芸術 ≒ アンチアート。ではなくダブルミーニングとしての、「半芸術」≒ハーフアート。
この言葉を、もとい「半芸術家」という肩書きを、小田島からはじめて(※小田島は半芸術という単語を民芸コレクター軸原ヨウスケよりはじめて聞いたらしい)聞いた瞬間に脳裏に浮かんだのが昨今よく聞かれるパートタイムアーティストという言葉である。すると必然的にフルタイムアーティストという言葉が浮かぶ。いわんや、フルタイムアーティストとは作家業のみが生業である。この国には一体何人が存在するのだろうか…。かたや、パートタイムアーティストとは一業にあらずパートタイム≒アルバイトよろしく、複数の生業と作家業も兼ねる者で相当数いるのではないかと思われる。つまりこれはちょっとした経済問題であり労働問題でもある。
さて、現代美術はマルセル・デュシャンに端を発し、美術芸術の中心地が欧州から米国に移行した頃より、旧態依然とした既成概念の破壊や新たな価値の再構築が大きな機能になっていった。それは、あらかじめ反芸術的であったため、それがルーチン化、及びシステム化してしまった場合、現代美術そのものの意義や概念すら否定される。…このような先端的思考が早々にアンチ、再び捻れてさらなる反芸術に至ることは想像に難くない。またさらにそんな反芸術ですら元来の思考を照らし合わせた途端に硬直するという宿命的な構造にあるのだ。
それを観、知り、学んだ、つくる者、考える者は、また考える。いかにしてその延々と続く悪循環から抜け出すことが可能なのだろうかと。
そして思案の末ひとつの仮説に思いあたる。既に確立した惰性の芸術よりも芸術未満の方が、芸術に至る過程の方が、本質は芸術的なのではないか?と。
現実として、フルタイムアーティスト無き日本のパートタイムアーティストが多数存在するなら、芸術無き日本の半芸術に可能性を感じずにはおられない。
思えば20数年前、自分自身がペインティング制作に注力していた頃、芸術的日曜画家などという肩書きを使っていた時期があるのだが、これも本流たる現代美術界隈に対するカウンターたり得たい意思の現れであり、今「半芸術」と極めて近いのではないかと感じる。またこの場を借りてさらに言えば、数年前よりARTYという、言わばアート未満の領域またはアート以外(例えばエンターテーメントなど)の領域からアートを見出そうとする、すなわちハーフアート的な考え方で現在の美術、芸術を捉え直すことを提唱していた。マーケットを優先、作品の商品性を優先するあまり芸術性が希薄にならざるを得ないのであれば本末転倒ではないか?であれば、あえて属性を持たず勝手にやる。とにかくつくる。自由?自立?インディペンデント?なものの方が面白いのではないか?
鬱屈とした社会情勢下、このような、または似た思考で何かに所属することなく最新、最高の美術、芸術を志した者は意外に多いのではないかと推察する。しかし全体主義対個人主義、ではなくその中間的な「半」。二極化の否定。新たな、積極的な半端の肯定。
もはや理由は再び述べるまでもないだろう。
どっち?いや、なにがよりシリアス?なにがよりリアルか?
大文字のアートはつまり体制でありメジャーでありパワーである。そこにアジャスト出来ない、またはあえて距離をとる者が「半芸術」を思考するのではないか?
重ねて言う。反ではない。ハイパワーを脱臼させるハーフパワー≒ローパワー。つまり端から対立構造ではない、しかしこれはバッドループから逃れるための、新しいカタチの抵抗なのだ。ここまで便宜上、美術をメジャーとマイナー、外部と内部、のような対抗軸で語って来たが実のところそこに境界線はない。外部は内部を正に内包しているのだから。
誰かの決めたジャンルやカテゴリーだけに囚われたくない。では誰がその可否や良し悪しを判断するのか?
それは、作品や展示を観たあなたであり、つくるあなた≒わたし、である。
さあ、考えてみよう。さあ、なにか、やってみよう。そう、まずはやるんだよ。ARTY DO IT!
文責:マジック・コバヤシ
オオケムシ
1992年愛媛県生まれ
武蔵野美術大学造形学部油絵学科卒業
絵画と漫画
webサイト http://ookemushi.sakura.ne.jp/
小田島等
1972年東京生まれ。イラストレーター。半芸術家。1995年よりCDジャケット、書籍、広告物のデザイン、アート・ディレクションを多数手がける。近年では展示活動にも力を入れている。近著にデザイン&イラスト作品集「ANONYMOUS POP」がある。
http://odajimahitoshi.com/
佐藤直樹
1961年東京生まれ。アートディレクター。北海道教育大学卒業後、信州大学で教育社会学・言語社会学を学ぶ。美学校菊畑茂久馬絵画教場修了。肉体労働から編集までの様々な職業を経た後、1994年『WIRED JAPAN』創刊にあたりアートディレクターに就任。1998年、アジール・デザイン(現ASYL)設立。サンフランシスコ現代美術館パーマネントコレクション他、国内外で受賞多数。アート・デザイン・建築の複合イベント「CET(セントラルイーストトーキョー)」(2003〜2010)のプロデュースを経て、2010年よりアートセンター「3331 Arts Chiyoda」デザインディレクター。以降絵画制作の機会が増え、大館・北秋田芸術祭2014やTRANS ARTS TOKYOにも参加している。美学校「絵と美と画と術」講師。多摩美術大学教授。http://www.asyl.co.jp/
高野紗織(小指)
小さいテレーズ・analsticksのドラマーとして全国各地で演奏。音楽を聴きながら浮かんだ情景を楽譜の概念なく譜面におこす試みや、音楽にあわせて自動書記をする。
http://koyubii.wix.com/takanosaori
小林亮平
hottroche名義で「munaa poyu」を茶柱、「yopaakuyu with me」を米ILLEGALARTより発表。team doyobiのremix作品に参加(skam)。また、ツポールヌ名義では走行する自家用車と戦っての演奏をはじめとしたテープ作品を多数リリース。過去、losapson?、magicroom、スイスのバーゼル、galaxxxyなどで展示。
長尾謙一郎
漫画家
72年愛知生まれ。
CDジャケットデザイン、本装丁、ミュージックビデオなどの映像製作、文筆、音楽、パフォーマンスなど多岐にわたる。
代表作『おしゃれ手帖』『ギャラクシー銀座』『PUNK』『クリームソーダシティ』など。
中島あかね
1992生まれ。東京の郊外に育つ。
2015年武蔵野美術大学視覚伝達デザイン学科卒業。
第11回グラフィック「1_WALL」 グランプリ。
ぬQ
絵画・まんが・アニメーション作家。
マジック・コバヤシ
1969年長野県生まれ。日本大学芸術学部卒業。日本イラストレーション展特別賞、アブソルートアート佳作。株式会社メイウェルにグラフィックデザイナーとして入社。後に横尾忠則氏と石川次郎氏のデザイン事務所株式会社スタジオ・マジック設立に参加。1999年よりフリーランス。グラフィックデザインを軸に映像、写真、インスタレーションなど表現方法にとらわれない制作を続けている。
水野健一郎
1967年岐阜県生まれ。アーティスト。鳥取大学工学部社会開発システム工学科中退。セツ・モードセミナー卒業。既視感と未視感の狭間にゆれるロマンチシズムを求めて自身の原風景であるテレビアニメの世界観を脳内で再構築し、ドローイング、ペインティング、グラフィック、アニメーションなど、多様な手法でアウトプット。作品集として『Funny Crash』(2009年)、『KATHY's "New Dimension"』(2011年)を刊行。個展などの展示活動の他、VJやライブペインティング、Theatre PRODUCTS、DIET BUTCHER SLIM SKIN、STOF、DRILL DESIGN、KATHYなどとジャンルを超えたコラボレーションを精力的に行い、テキスタイルデザイン、イラストレーション、CDジャケット、PV、NHKのオープニングアニメなど、仕事内容も多岐にわたる。http://kenichiromizuno.blogspot.jp/
渡部剛
1979年東京生まれ。2010年度美学校「絵と美と画と術」講座修了。古雑誌や赤文字系雑誌のキャッチコピーを大量に切り貼りしたり(「夢の島、あるいは未完の廃墟」シリーズ)、レコードジャケットとレコードにコラージュ/ペイントをしたり(「GREATEST HITS」シリーズ)、ペイントしたレコード盤の音をサンプリングして再構成して曲をつくったり(「Scratch&Melt」シリーズ)、北海道土産の木彫りの熊にペイントしたり(「BEAR Garden」シリーズ)、たまに絵を描いたりなど。最近の主な展示:「TRANS ARTS TOKYO2012(2012)」「3331アンデパンダン スカラシップ展(2013)」、「渡部剛×齋藤祐平展『SOFT SHOP』(2014)@the blank gallery」「KUMA NOVA(2015)@TETOKA」
mizutama
1985年生まれ 岡山県出身 大阪市在住。
10代の頃から音楽活動を始める。2011年より大阪此花区の共同アトリエ「此花メヂア」入居。共に展覧会に参加。日常の影響を取り込んではアウトプットする。何でも無いものの面白さ、格好良さと密に関わり続ける事、ミックスアップした物事をサンプリング的手法を用いて作品制作する。そのスタイルは一見、既成のものに見えて、そのものではない。
<主な活動>
2011 中崎 透「エピソード」(梅香堂) オープニング即興演奏
2012 re_processor (此花メヂア、大阪)
2012 三輪の家 (奈良)
2013 squash domain (Gallery Parc、京都)
2013 HANARART 2013 [アイダカラダ] 展 (境町の家、奈良)
2013 mizutama 写真展 「wear は食べない」(應典院、大阪)
2014 「 Stolen Names」(京都芸術センター、京都)
20m61
http://ゆかいなおじさん.com/
文房堂ギャラリー
東京都千代田区神田神保町1-21-1 文房堂ビル4F
【アクセス】
・JR御茶ノ水駅 御茶ノ水橋口より徒歩約7分
・都営三田線・新宿線 東京メトロ半蔵門線 神保町駅A7・A5出口より徒歩約3,5分
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